小学校プログラミング必修化は何してる?SE親が徹底解説

プログラミング

2026.03.28 更新:統計データの出典を正確な調査名・URLに修正、「必修化5年目」→「6年目」に更新、共通テスト「情報」導入や文科省手引リンクを追加、年表現を西暦に統一

「小学校でプログラミングが必修になったらしいけど、実際に何をやっているの?」──2020年度の必修化から6年が経ちましたが、この疑問を持つ保護者は少なくありません。SE歴20年・2歳の息子を持つ筆者もその一人でした。必修化の事実は知っていても、中身を正確に把握している親は意外と少ないのが実情です。

結論から言うと、「プログラミング」という教科は存在しません。算数や理科など既存の教科の中で、プログラミング的思考──つまり物事を順序立てて論理的に考える力──を育む取り組みが行われています。本記事では、文部科学省の公式資料をもとに必修化の全体像を解説し、SE歴20年の現場感覚から「必修化の先」にあるAI時代への備えまでお伝えします。

そもそもプログラミング教育の必修化とは?

「プログラミング」という教科は存在しない

多くの保護者が誤解しがちですが、小学校に「プログラミング」という新しい教科が追加されたわけではありません。2020年度に改訂された学習指導要領では、各教科の中にプログラミング体験を織り込む形で実施することが定められています。つまり、時間割に「プログラミング」の枠はなく、算数の授業中にプログラミングを使った学習活動が行われる、というイメージです。

必修化の3つのねらい

文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」が示すプログラミング教育のねらいは3つあります1つ目は「プログラミング的思考」を育むこと。これは「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義されています。2つ目は、コンピュータの働きやプログラムのよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くこと。3つ目は、各教科等の内容をより確実に学ぶための手段として活用することです。

文部科学省の定義する「プログラミング的思考」は、プログラミング言語を覚えたり技能を習得したりすることではありません。「論理的に考える力」の育成が主目的です。

実際に何をやっている?教科別の具体例

算数(5年生)──正多角形の作図をプログラミングで

学習指導要領で明確に例示されているのが、5年生の算数「正多角形」の単元です。Scratchなどのビジュアルプログラミング言語を使い、「辺の長さが全て等しく、角の大きさが全て等しい」という正多角形の定義をもとに、正方形、正三角形、正六角形などを画面上に描かせます。「100歩進む→右に90度回る」を4回繰り返すと正方形が描ける──このように、図形の性質を「命令の組み合わせ」として体感します。手作業では描きにくい正十二角形なども瞬時に作れるため、コンピュータの強みも実感できる授業です。

理科(6年生)──センサーで電気の制御を体験

もう一つの代表例が、6年生の理科「電気の性質や働きを利用した道具」の単元です。人感センサーや照度センサーを使い、「人が近づいたら扇風機をON、離れたらOFF」というプログラムを組みます。条件分岐(もし~なら)の考え方を体験しながら、身の回りの照明やエアコンにも同様の仕組みが使われていることに気付く授業です。

総合的な学習の時間──探究的な課題解決

総合的な学習の時間では、教科に縛られない形でプログラミング体験が行われます。たとえば地域の課題を見つけてその解決策をプログラミングで表現したり、自分たちの学校を紹介するコンテンツを作成したりする活動が各地で実施されています。探究的な学習の過程にプログラミング体験を組み込む形です。

A〜F分類って?プログラミング教育の6つのカタチ

文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引」では、プログラミング教育の学習活動をA〜Fの6つに分類しています。A分類は学習指導要領に例示されている単元(前述の算数・理科・総合)で実施するもの。B分類は学習指導要領に例示されてはいないものの、各教科の中で実施するもの(たとえば音楽でリズムパターンをプログラミングするなど)。C分類は各教科とは別に教育課程内で実施するもので、プログラミング体験の導入や操作練習として活用されます。D分類はクラブ活動など特定の児童対象、E分類は学校を会場とした課外活動、F分類は学校外での学習機会です。

プログラミング教育 A〜F分類
分類概要具体例
A指導要領に例示・教科内算数の正多角形、理科の電気制御
B例示なし・教科内音楽のリズム、図工の作品制作
C教科外・教育課程内プログラミング体験・操作練習
Dクラブ活動等プログラミングクラブ
E課外活動(学校会場)放課後プログラミング教室
F学校外民間スクール・家庭学習

ポイントは、A〜B分類は全校で実施されるべきものですが、C分類以降は学校の裁量に委ねられている点です。この仕組みが、後述する「学校差」を生む原因の一つになっています。

必修化から6年──今なお残る学校差という課題

必修化=全国で均一な教育が行われている、と思いがちですが、現実は異なります。2021年のくもん出版の保護者調査では、子どもの学校でプログラミング教育が実施されていると把握していた保護者は28.1%にとどまりました(リセマム報道)。また、NPO情報セキュリティフォーラムが2021年度に神奈川県内の公立小学校80校を対象に行った調査では、学習指導要領で例示されている5年生算数・6年生理科でのプログラミング教育を実施している学校は約4割にとどまっています(NPO情報セキュリティフォーラム調査PDF)。

この格差の背景には、教員のICTスキルの差、研修機会の地域差、そしてプログラミング教育に充てる時間の確保が難しいという構造的な問題があります。統一カリキュラムが存在しないことも学校ごとの取り組み幅に影響を与えています。保護者としては「うちの学校ではどの程度やっているのか」を把握しておくことが大切です。

必修化されていても、実施頻度や内容には学校間で大きな差があるのが現状です。「必修=十分な教育を受けている」とは限りません。

SE歴20年の本音──必修化は”入口”としては十分

現役SEとして20年間コードと向き合ってきた立場から言うと、この必修化は「全然いいと思う」が正直な感想です。プログラミング的思考──つまり「物事を分解して、順序立てて、条件で分岐させて、繰り返す」という考え方は、コードを書かなくても社会のあらゆる場面で役立ちます。これを小学校の段階で全員が体験できるのは価値があります。

ただし、これだけで「プログラミングができる子」にはなりません。必修化の目的もそこにはありません。必修化はあくまで”入口”であり、その先に進むかどうかは家庭や本人の意欲次第です。

そしてここからはSEとしての脱線ですが、かつて「いつかPCやExcelが使えないのと同じくらい、コードも書けないと困る日が来るかもしれない」と思っていた時期がありました。ローコードやノーコードの普及で、エンジニアでない人もシステムに触れる機会は確実に増えています。しかし2026年現在、それよりも先に「AIが使えないこと」の方が問題になりそうだと感じています。コードを書く力よりも、AIに正しく指示を出し、結果を評価し、使いこなす力──いわばAIリテラシーの方が、多くの人にとって差し迫ったスキルになるのではないでしょうか。プログラミング的思考は、そのAIリテラシーの土台にもなるという意味で、必修化の意義はむしろこれから高まると考えています。

プログラミング的思考は「コードを書く力」だけでなく「AIに正しく指示を出す力」の土台にもなります。必修化の価値は、AI時代の到来でむしろ高まると筆者は考えています。

AI時代に子どもに身につけさせたいスキルについては「AI時代に食いっぱぐれない子どもを育てるスキル」で詳しく解説しています。

必修化の”その先”──家庭でできること

小学校での必修化はゴールではなく、プログラミング教育の入口です。中学校では技術・家庭科でプログラミングの内容が拡充され、2022年度からは高校で「情報I」が必修科目になりました。さらに2025年度の大学入学共通テストでは「情報」が正式科目として導入されています。小学校→中学校→高校→大学入試と、プログラミング的思考は教育課程全体を貫くテーマになりつつあります。

とはいえ、学校のプログラミング教育で学ぶのはあくまで「考え方の入口」です。手を動かす実践経験は、家庭や課外活動で補完することでより効果的になります。家庭で意識したいポイントは3つあります。

  • 日常の中で「順番に考える」体験を増やす──料理の手順を一緒に考える、片付けの順序を決めるなど、「まず何をして、次に何をする?」という会話を意識する
  • ビジュアルプログラミングに親子で触れる──Scratch(8歳〜)やViscuit(4歳〜)など無料ツールで遊ぶ体験が、学校の授業の理解を深める下地になる
  • 「AIを使う側」になるリテラシーを意識する──プログラミング的思考の先にあるAI活用力を見据え、「調べ方」「質問の仕方」を日常に取り入れる

子ども向けのコーディング教材については「子供向けコーディング教材・始め方完全ガイド」で詳しくまとめています。また、AIリテラシーの育て方は「AI教育を子供に始める完全ガイド」をご覧ください。

よくある質問

Q
プログラミングの成績はつくの?
A

「プログラミング」という独立した教科ではないため、単独の成績評価はつきません。プログラミングを取り入れた活動の評価は、各教科(算数や理科など)の学習評価の中に含まれます。通知表に「プログラミング」の欄が増えるわけではないので、その点は安心してください。

Q
家でパソコンを触らせた方がいい?
A

必須ではありませんが、パソコンやタブレットの基本操作に慣れておくと学校の授業にスムーズに入れます。GIGAスクール構想により全国の公立小中学校では1人1台の端末整備がほぼ完了しており(2022年度末時点で99.9%の自治体が整備完了)、2025年度からは端末更新を含むGIGAスクール第2期に移行しています。学校でも端末に触れる機会は増えているため、家庭では無理にパソコンを買い与えなくても大丈夫です。

Q
プログラミング教室に通わせるべき?
A

必修化の範囲であれば学校の授業で完結します。それ以上の実践的なスキル(ゲーム制作、ロボット制御など)を求める場合は、民間のプログラミング教室も選択肢になります。コエテコ×船井総研の調査によると2024年の子ども向けプログラミング教育市場は前年比114.5%の253億8千万円に達しており(PR TIMES)、選択肢は年々広がっています。まずは無料のScratchやViscuitで子どもの反応を見てから検討するのがおすすめです。

Q
何年生から始まるの?
A

学習指導要領では「何年生で実施しなければならない」という明確な学年指定はありません。例示されているのは5年生の算数と6年生の理科ですが、低学年からC分類(教科外のプログラミング体験)として実施している学校もあります。お子さんの学校の状況は、担任の先生や学校だよりで確認してみてください。

Q
コードを書けるようになるの?
A

小学校段階では基本的にScratchなどのビジュアルプログラミング(ブロックを組み合わせて命令を作る方式)が使われます。テキストでコードを記述するプログラミングは、中学校の技術・家庭科や高校の必修科目「情報I」で段階的に学んでいきます。2025年度からは大学入学共通テストにも「情報」が導入されており、小学校の必修化はその長い道のりの最初の一歩です。

まとめ

小学校のプログラミング教育は「コードを書く授業」ではなく「論理的に考える力を育てる授業」です。プログラミングという教科は存在せず、算数・理科・総合の時間などに織り込まれる形で実施されています。必修化の中身を正しく理解すれば、過度な期待も不安もなくなるでしょう。

一方で、学校間の実施格差があるのも事実です。必修化=十分な教育ではないことを念頭に置き、家庭での補完を意識しておくと安心です。日常会話の中で「順番に考える」機会を増やす、ビジュアルプログラミングに触れさせる、そしてAIリテラシーへの意識を持つ──この3つが、これからの時代を生きる子どもたちへの最良の準備になります。

プログラミング的思考は、コードを書く力だけでなく、AI時代を生き抜く土台になります。必修化の先を見据えて、今から親子で準備を始めてみてください。

2026.03.28 ─ 統計データの出典修正、「必修化6年目」に更新、共通テスト「情報」情報追加、外部エビデンスリンク追加
2026.02.21 ─ 初版公開

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