子どものプログラミング向いてない?SE歴20年の処方箋

プログラミングの向き不向きを見極める正しいものさしとSE歴20年の現場視点による子ども向け処方箋 プログラミング

2026.03.28 更新:プログラミング的思考5要素・必修化・Scratch体験記事への内部リンク追加、FAQ年齢帯を3区分に統一、3つの素養対応表追加、7つのサインを根拠付き記述に拡充

小学校でプログラミング教育が必修化され、「うちの子も何かやらせなきゃ」と焦る親が増えています。体験教室に連れて行ったけど興味を示さなかった。Scratchを見せたけど5分で飽きた。そんな姿を見て「うちの子、プログラミング向いてないのかも」と感じていませんか。

結論から言います。その判断、ちょっと待ってください。筆者はSE歴20年の現役エンジニアですが、現場で見てきた限り「プログラミングに向いてない人」は存在します。ただし、親が考える「向いてない」と、プロが考える「向いてない」は、見ているものさしがまったく違います。

この記事では、プログラミングの向き不向きを正しく見極めるためのものさしと、日常に隠れている子どものプログラミング的素養のサイン、そして「向いてない」のではなく「環境が合っていないだけ」というケースについてお伝えします。

※本記事の情報は2026年3月時点のものです。

そもそも「プログラミングに向いている」とは何か

多くの親が見ている「間違ったものさし」

「プログラミングに向いている子」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか。パソコンが大好き、ゲームに夢中、機械をいじるのが得意──こんなイメージではないでしょうか。

【よくある”間違ったものさし”】パソコンに興味がない=向いてない/体験教室で楽しそうじゃなかった=向いてない/ゲームよりも外遊びが好き=向いてない

これらはすべて「プログラミングの入口」に対する反応であって、プログラミングそのものへの適性とは別の話です。パソコンが好きかどうかは、包丁を持つのが好きかどうかで料理の才能を測るようなもの。道具への親しみと、その道具で何を生み出せるかはまったく別の能力です。

文部科学省が定義する「プログラミング的思考」

実は文部科学省も、プログラミング教育の目的を「コーディングを覚えること」ではないと明言しています。

文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」では、プログラミング的思考を「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」と定義しています。

つまり、プログラミング教育で本当に育てたいのは「コードが書ける子」ではなく「物事を分解し、順序立て、改善できる子」です。この視点で見れば、ものさしはガラッと変わります。プログラミング的思考を「分解」「順序立て」「条件分岐」「繰り返し」「デバッグ」の5つの要素に分解した解説はプログラミング的思考の親向け解説にまとめています。

なお、2025年5月の中央教育審議会特別部会では、次期学習指導要領に向けて小学校の「総合的な学習の時間」に情報領域を新設する方針が議論されています。プログラミング的思考の重要性は今後さらに高まる見通しです。

【正しいものさし】物事を順序立てて考えられるか/「なんで?」と原因を探ろうとするか/面倒なことを工夫して楽にしようとするか/うまくいかないとき別の方法を試せるか

SE歴20年が考える「プログラミングに必要な3つの素養」

20年間システムエンジニアとして現場にいる筆者が、「この人はプログラミングに向いている」と感じる人に共通する素養は3つあります。逆に言えば、この3つのどれかが子どもの中に見えたら、「向いてない」と判断するのは早すぎます。

素養ひとことで子どもに見えるサイン
論理的思考「なぜ?」を分解できる力「なんで?」を繰り返す、パズルの手順を考える
効率への感覚「面倒くさい」を楽にしたい衝動片付けの近道を編み出す、お着替えの順番を決める
試行錯誤を楽しむ力エラーを手がかりにできる粘り強さ積み木が崩れても別の積み方を試す、迷路をやり直す

以下、3つの素養をそれぞれ詳しく見ていきます。

①論理的思考──「なぜ?」を分解できる力

現場で感じること

プログラミングの本質は「大きな問題を小さく分解し、一つずつ解決する」ことです。20年の現場経験で断言できるのは、確証なく感覚だけで前に進む人はプログラミングに苦労するということ。逆に「なぜこうなるのか」を一つずつ論理で追える人は、未経験でも驚くほど早く成長します。

子どもに置き換えると、「なんで?」を繰り返す子、パズルの手順を考える子、積み木を崩れないように下から順番に積む子──こうした行動はすべて論理的思考の芽生えです。

②効率への感覚──「面倒くさい」は才能

現場で感じること

優秀なエンジニアほど「効率厨」です。同じ作業を2回やるのが耐えられない。手動でやっていることを自動化したくてたまらない。この「面倒くさいから楽にしたい」という衝動こそ、プログラミングの原動力です。筆者自身もそうで、手作業を自動化するために何時間もかけてコードを書く──矛盾しているように見えますが、これがプログラマーの本能です。

子どもで言えば、片付けのとき「こうすれば早い」と自分なりの方法を編み出す子、お着替えの順番を効率よく決めている子。「怠けている」のではなく「最適化している」と捉えると、見え方が変わります。

③試行錯誤を楽しめる力──エラーは敵ではなく手がかり

現場で感じること

プログラミングでは、書いたコードが一発で動くことのほうが珍しいです。エラーが出て、原因を調べて、修正して、また動かす。この「デバッグ」と呼ばれるプロセスを苦痛に感じるか、パズルを解くように楽しめるかが大きな分かれ道です。

子どもの場合、積み木が崩れても別の積み方を試す子、迷路で行き止まりになっても戻ってやり直す子。「失敗しても別の方法を試せる」力は、プログラミング的素養そのものです。

日常に隠れている「プログラミング的素養」のサイン7つ

パソコンの前に座らなくても、子どもの日常行動の中にプログラミング的素養のサインは隠れています。以下の7つのうち、お子さんに1つでも当てはまるものがあれば、「向いてない」と判断するのは早すぎます。

  • 数の順序を理解している(4の次は5、など)──順序立てて考える力の芽生え
  • 「なんで?」「どうして?」を繰り返す──原因と結果を探る論理的思考の原型
  • 片付けや準備の順番にこだわる──手順を最適化する効率感覚
  • 「面倒くさい」と言って楽な方法を探す──自動化欲求の原型
  • ルールのある遊び(ボードゲーム・カードゲーム等)が好き──条件分岐の理解
  • おもちゃや食べ物を色・形・種類で分類する──データの整理・構造化の感覚
  • 失敗しても別の方法を自分で試す──デバッグ思考の萌芽

サインの読み解き方──3つの素養と結びつける

7つのサインはバラバラに見えますが、前のセクションで紹介した「3つの素養」に対応しています。お子さんにどのサインが当てはまるかを観察することで、どの素養の芽が育っているかが見えてきます。

たとえば「なんで?を繰り返す」「数の順序を理解している」は、論理的思考の素養に対応します。SEの現場でバグの原因を突き止める「なぜなぜ分析」と構造は同じです。子どもの「なんで?」攻撃は親にとっては大変ですが、論理の芽が伸びている証拠だと捉えてみてください。

「面倒くさいと言って楽な方法を探す」「片付けの順番にこだわる」は、効率への感覚の表れです。子どもが手抜きしているように見えても、実は「もっと効率的な方法はないか」を探索しています。優秀なエンジニアほど「同じことを2回やりたくない」と感じるもので、この衝動の芽は幼少期から現れます。

「失敗しても別の方法を試す」「ルールのある遊びが好き」は、試行錯誤を楽しむ力に直結します。積み木が崩れても泣かずに別の積み方を試す子は、プログラミングの「デバッグ」を自然にやっているのと同じです。1つでもサインが見えたら、「向いてない」と判断するのは明らかに早すぎます。

筆者の息子は2026年3月時点で2歳半ですが、「4の次は5」という数の順序を把握し始めています。まだプログラミングの「プ」の字も知らない年齢ですが、順序を理解する力はすでに芽生えています。この芽を「プログラミング的素養」と呼ぶかどうかはさておき、少なくとも「向いてない」と決めつける材料はどこにもありません。実際に息子のプラレール遊びを1年間観察した記録では、レールの凹凸を合わせる空間認識や1周させるための経路検討など、プログラミング的素養に通じる行動がいくつも見られました。詳しくはプラレール遊びで育つ5つの学びにまとめています。

「向いてない」のではなく「環境が合っていない」だけ

SE歴20年で見てきた実例

筆者がSE歴20年の中で目の当たりにした話をひとつ紹介します。同じ部署で一緒に働いていた人がいました。正直に言えば、当時の評価はあまり高くなく「プログラミングは向いてないのかな」と周囲も本人も感じていたと思います。

ところが、その人が別の部署に異動してからは、いきいきと活躍するようになりました。異動先はローコード開発がメインの部署でした。ゼロからコードをゴリゴリ書くのは苦手でも、ローコードツールで業務システムを組み上げる仕事では、持ち前の業務理解力と効率感覚が存分に発揮されたのです。

この経験から学んだのは「向いてない」のではなく「環境が合っていなかった」だけだということ。これは子どものプログラミング教育にもそのまま当てはまります。

コードを書くだけがプログラミングではない

大人の世界でもローコード・ノーコードという「コードをほとんど書かない開発手法」が急速に広がっています。子ども向けのプログラミング教育でも同じことが言えます。

Scratchでブロックを組み合わせるのが合わなくても、Viscuit(ビスケット)で絵を動かすのは楽しいかもしれません。画面上の操作が合わなくても、レゴのロボット教材で手を動かしながら考えるほうが夢中になるかもしれません。「プログラミング教室で楽しくなさそうだった」のは、その入口が合わなかっただけです。入口が合わなかったとき、「向いてない」と結論づける前に入口を変えてみる。これだけで子どもの反応がガラッと変わることがあります。Scratchに興味があるお子さんには、親がまず迷路ゲームを1本作ってみる体験がおすすめです。手順はScratchの始め方|親子で迷路ゲームで約40分のチュートリアルにまとめています。

入口が合わなかったとき、「向いてない」と結論づける前に入口を変えてみる。これだけで子どもの反応がガラッと変わることがあります。

親ができる3つのこと

①「向いてない」と決める前に入口を変える

Scratchがダメならロボット教材、ロボット教材がダメならアンプラグド(パソコンを使わない)プログラミング。入口の選択肢は年々増えています。1つの体験で判断せず、最低でも3つは違う入口を試してみてください。小学校でのプログラミング教育で実際に何が行われているか知っておくと、入口選びの参考になります。具体的な授業内容は小学校プログラミング必修化の徹底解説にまとめています。

プログラミングと算数を組み合わせた教材は、数字が好きなお子さんには特に効果的です。算数の苦手意識をプログラミングで克服できるケースもあります。
算数・数学が好きになる!子供向けコーディング教材・始め方完全ガイド

②日常の「プログラミング的行動」をほめる

先ほど挙げた7つのサインに気づいたら、具体的に言葉にしてほめてあげてください。

「順番考えてやったんだね、すごいね」「そのやり方、効率いいね!」「うまくいかなかったのに別の方法試したの、かっこいいね」──こうした声かけが、子どもの中のプログラミング的素養を少しずつ強化します。「パソコンの前に座らせること」よりもはるかに大切です。

③親自身が「わからない」を楽しむ姿を見せる

筆者はSE歴20年ですが、知らないことだらけです。技術は日々進化し、昨日の正解が今日の非効率になることも珍しくありません。プロでも「わからない→調べる→試す→失敗→また調べる」の繰り返しです。

この「わからない状態を楽しむ姿」を子どもに見せることが、プログラミング的素養を育む最高の教材になります。「パパもこれわかんないんだよね。一緒に調べてみよっか」──この一言が、子どもにとって「わからない=怖い」ではなく「わからない=面白い」に変わるきっかけになります。

AI時代を生きる子どもに必要な力の全体像を整理した記事もあります。プログラミングだけでなく、好奇心やレジリエンスなど「環境が変わっても使える力」の育て方をまとめています。
AI時代に「食いっぱぐれない子」を育てるために、今やるべきこと・やらなくていいこと

よくある質問(FAQ)

Q
プログラミングに向いてない子の特徴はありますか?
A

SE歴20年の視点で言えば「確証なく感覚だけで前に進み、結果を振り返らない」タイプはプログラミングに苦労する傾向があります。ただし、これは大人の話であり、子どもの場合は発達段階で大きく変わります。小学生の時点で「向いてない」と断定するのは早すぎます。

Q
プログラミング教室の体験で興味を示しませんでした。やめたほうがいいですか?
A

1つの教室で判断するのは早いです。Scratchが合わなくてもロボット教材やViscuitなど、入口はたくさんあります。料理が嫌いだと思っていた子が、自分で火を使わせてもらったら夢中になった──というのと同じで、体験の質と入口を変えるだけで反応は大きく変わります。

Q
何歳からプログラミング教育を始めるべきですか?
A

焦る必要はありません。年齢帯ごとの目安は次の通りです。5〜8歳はプログラミングそのものよりも「なぜ?と問う力」「順序立てて考える力」といった非認知能力の土台づくりが最優先で、ViscuitやScratch Jrで遊びの延長として触れるのが適切です。9〜12歳はScratchなどのビジュアルプログラミングに進む時期で、座標や変数を遊びながら学べます。13歳以降はPythonなどテキストベースのプログラミングやAIツールの活用に進めます。土台がしっかりしていれば、何歳から始めても伸びます。

Q
親にプログラミングの知識がなくても子どもの素養を見極められますか?
A

はい。この記事で紹介した「日常の7つのサイン」はすべてプログラミングの知識がなくても観察できるものです。コードが書けるかどうかではなく、論理的に考えているか、効率を求めているか、試行錯誤を楽しんでいるかを見てください。

Q
将来プログラマーにならなくてもプログラミング的思考は役に立ちますか?
A

間違いなく役立ちます。プログラミング的思考の本質は「物事を分解し、順序立て、改善する力」であり、これはどんな職業でも使える汎用スキルです。文部科学省も「将来どのような職業に就くとしても普遍的に求められる力」と位置づけています。AI教育の始め方も含めた全体像はAI教育を子供に始める完全ガイドで詳しく解説しています。

まとめ:「向いてない」を「まだ出会ってない」に書き換えよう

この記事のポイントを整理します。

  • 「パソコンに興味がない=向いてない」は間違ったものさし
  • プログラミング教育の目的はコーディングではなく「プログラミング的思考」の育成
  • SE歴20年が考える必要な素養は「論理的思考」「効率への感覚」「試行錯誤を楽しむ力」
  • 日常の行動に7つのプログラミング的素養のサインが隠れている
  • 「向いてない」のではなく「環境(入口)が合っていない」可能性を疑う
  • 親ができるのは入口を変える・日常をほめる・わからないを楽しむ姿を見せること

筆者自身、子どもの頃は「プログラミング」という言葉すら知りませんでした。算数が好きで、お小遣いを貯めるのが得意で、カードゲームの戦略を考えるのが楽しかった。RPGゲームで効率の良い攻略法を探すのが好きだった。振り返れば、それらはすべてプログラミング的素養のサインでした。でも当時の自分も、親も、それに気づいていませんでした。

お子さんの中にも、まだ名前のついていない素養が眠っているかもしれません。「向いてない」と決めつけるのではなく「まだ出会ってないだけ」と捉えてみてください。ものさしを変えれば、見える景色は変わります。

2026.03.28 ─ 内部リンク追加、FAQ年齢帯3区分に統一、素養対応表追加、7つのサイン拡充
2026.02.21 ─ 初版公開

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