
うちの子が2歳のころ、私が作ったScratchJrの迷路を触らせてみたことがある。猫を動かすだけの単純なものだったけど、自分の指で画面のキャラクターが動くのが面白かったみたい。意味はまだ分かっていなかったと思う。それでも「自分が触ると何かが起きる」と気づくのは、立派な第一歩だった。
幼児・低学年にScratchがおすすめな理由
プログラミングと聞くと難しそうに感じるけれど、幼児・低学年が触れるのは「文字を打つコード」ではない。色のついたブロックを並べて、キャラクターを動かす遊びだ。だから読み書きがおぼつかない年齢でも始められる。
ブロックを並べるだけで動かせる手軽さ
ScratchJrのブロックは、矢印や記号のアイコンでできている。「右に動く」「ジャンプする」といった命令が絵で表現されているので、文字が読めなくても意味が伝わる。指でつまんでつなげれば、それがそのまま小さなプログラムになる。
キーボードもマウスもいらない。タブレットの画面を直接さわるだけ。この「さわったら動く」という体験が、小さい子にはいちばん刺さる。
考える力と創造力が自然に育つ
ブロックを並べる順番を変えると、キャラクターの動きも変わる。思った通りに動かないと、子どもは自分で並べ直す。この試行錯誤こそが、プログラミングの土台になる「順序立てて考える力」を育てる。
ここで身につく力は、コードを書く力そのものより、もっと手前にある思考の習慣だ。なぜそう動くのかを考える姿勢は、プログラミングに限らず学習全般に効いてくる。この考え方の中身は、プログラミング的思考を構成する要素を親向けにかみ砕いたプログラミング的思考の5つの要素で整理しているので、概念から押さえたい人はそちらが早い。
ScratchJrとScratchの違いと選び方
「Scratch」と「ScratchJr」は名前が似ているが、対象年齢も操作も別物だ。迷ったら年齢で選べばいい。
| 項目 | ScratchJr | Scratch |
|---|---|---|
| 対象年齢(公式) | 5〜7歳 | 8歳以上 |
| 主なデバイス | タブレット中心 | パソコン中心 |
| 操作 | アイコンを指でつなぐ | 文字つきブロックをマウスで |
| 文字の読み書き | 読めなくてOK | ある程度読めるとよい |
| 料金 | 無料 | 無料 |
ざっくり言えば、5〜8歳の入口はScratchJr、9歳前後で文字が読めるようになったらScratch本体、という流れになる。Scratch本体で迷路ゲームを作るところまでの手順は小学生向けScratchの始め方と迷路ゲーム作りに詳しいので、お子さんが小学校中学年以降ならそちらから入ってもいい。
はじめる前に準備するもの
身構える必要はない。ScratchJrは無料で、特別な機材もいらない。手持ちのタブレットがあれば今日から始められる。
推奨デバイスとブラウザ環境
ScratchJrはアプリだ。開発元のScratch財団が運営するScratchJr公式サイトによると、iPad・Androidタブレット・Chromebookに対応していて、いずれも無料。一度インストールすればオフラインでも使える。Scratch本体はブラウザで動くので、Chromebookやパソコンが向く。
筆者の実感として、小さいうちはタブレット一択でいい。マウスでブロックを正確につまむ操作は、幼児にはかなり難しい。指でさわるタッチ操作のほうが圧倒的に直感的だ。

わが家はタブレットを持っていなかったので、画面を完全に平面にしてタッチパネルとして使えるパソコンで代用していた。タブレット風に直接さわれるなら、これでも十分遊べた。ただ、これから買うなら素直にタブレットをおすすめする。
アカウント登録と保護者の見守り設定
ScratchJrはアカウント登録が不要で、ネット接続もいらない。作った作品は端末の中だけに保存される。だから個人情報の心配がほぼなく、幼児の最初の一歩として安心だ。
一方、Scratch本体でオンラインに作品を公開・共有するにはアカウント登録が必要になる。子ども向けには保護者のメールアドレスでの登録や公開範囲の設定があるので、Scratchに進む段階では公開設定を親が一緒に確認しておくといい。
学習を続けるための時間の決め方
時間は短くていい。集中力が続くのはせいぜい10〜15分。「もっとやりたい」で終わるくらいがちょうどよく、無理に長く続けさせると次から嫌がる。
筆者は時間も内容もきっちり決めず、子どもが触りたがったときに好きにさわらせる方針だった。幼児のうちは「決まったカリキュラムをこなす」より「遊びの延長で触れる」ほうが続く。
最初の一歩!キャラクターを動かしてみよう
ここからは、ScratchJrでキャラクターを動かす流れを紹介する。親が先に一度さわっておくと、子どもがつまずいたときに横でヒントを出せる。
アプリを開いて新しいプロジェクトを作ると、まっさらな画面が出る。最初に動かしたいキャラクター(ScratchJrでは絵のキャラ)と、その後ろの背景を選ぶ。海・森・宇宙など用意された背景から選んでもいいし、自分で描くこともできる。ここは子どもに自由に選ばせると一気に乗ってくる。
画面下に並んだブロックから「右に動く」などの青い動きブロックを、指でドラッグして組み立てエリアに置く。先頭に緑の旗ブロックをつないで旗をタップすると、その通りにキャラクターが動く。数字を変えれば動く距離も変わる。「ブロック=命令」という関係が、ここで初めて体感できる。
同じ動きを何度も繰り返したいときは、繰り返し(ループ)ブロックを使う。動きブロックを繰り返しブロックで囲むと、ぐるぐる回り続けたり往復したりする。命令を1つ置くだけで連続した動きになるので、子どもは「魔法みたいだ」と感じる。ここまで来ると、もう立派なアニメーションだ。
スプライトと背景の選び方
Scratch本体では、動かすキャラクターを「スプライト」と呼ぶ。ScratchJrの「キャラクター」にあたるものだ。どちらも複数のキャラを置けるので、最初は1体だけにして、慣れたら増やすと混乱しない。
「動き」ブロックで前進・回転させる
前進・後退・回転といった動きは、すべて専用のブロックが用意されている。回転ブロックを混ぜると動きに変化が出て、子どもの食いつきが変わる。まずは前に進ませて、止める。この往復だけでも、最初は十分楽しい。
繰り返しブロックでアニメーションに挑戦
繰り返しは、プログラミングらしさが一番伝わるブロックだ。「2歩進んで1回まわる」を繰り返すだけで、キャラクターが画面をぐるぐる動き回る。命令はたった数個。それで連続した動きが生まれる体験は、小さい子ほど驚いてくれる。
遊びながら学べるおすすめミニ作品
最初の動かし方を覚えたら、次は小さな作品づくりに進む。ここで紹介する3つは、ScratchJrの公式アクティビティや作例でも定番のテーマだ。わが家で実際に作ったのは追いかけっこ系の迷路なので、ダンスや絵本は公式の機能をもとに紹介する。
音と一緒に踊るダンスアニメ
ScratchJrには音を鳴らすブロックと、自分の声を録音して使える機能がある。動きブロックと音ブロックを組み合わせると、キャラクターが音に合わせて踊る作品が作れる。子どもが自分の声を吹き込めるので、「自分だけの作品」という実感が一気に強まる。
クリックで反応するインタラクティブ絵本
「キャラクターをタップしたら何かが起きる」という仕組みも、ScratchJrの得意分野だ。タップで反応するブロックを使えば、押すとセリフが出る、別の場面に切り替わる、といった動く絵本が作れる。ページをめくるだけの絵本と違い、子どもが触って物語が進むのが新鮮に映る。
簡単な追いかけっこゲーム
キャラクターを指で操作して、別のキャラやゴールを目指す–いわゆる迷路・追いかけっこ系は、小さい子に一番ウケる。わが家で2歳のころに触らせたのも、この迷路だった。作るのは親、遊ぶのは子ども、という分担でいい。最初から子どもが全部作る必要はなく、「親が作った作品で遊ぶ」だけでも興味の入口としては十分だ。
つまずいたときの保護者サポートのコツ
子どもが「思った通りに動かない」と止まったとき、親の関わり方で続くかどうかが決まる。先に断っておくと、幼児のうちは丁寧に教え込むより、自由に触らせるほうがうまくいく場面が多い。
答えを教えずヒントを出す声かけ
うまくいかないとき、つい正解のブロックを置いてあげたくなる。でもScratchの教育的なねらいは、子どもが自分で気づくところにある。「どのブロックを変えたら動くと思う?」と問いに変えると、子どもは自分で試し始める。答えを渡すより、考えるきっかけを渡すほうがいい。
失敗を楽しむ雰囲気づくり
プログラムは思い通りに動かないのが当たり前だ。動かなかったときに「違うね」で終わらせず、「面白い動きになったね」と一緒に笑えると、子どもは失敗を怖がらなくなる。この「失敗を楽しむ感覚」は、プログラミングだけでなくあらゆる挑戦の土台になる。もし「うちの子には向いていないかも」と感じても、入口を変えるだけで変わることが多い。その見極め方はSE歴20年の視点でまとめた子どもがプログラミングに向いてないと感じたときの対処が参考になる。
作品を一緒に振り返って褒める
できあがった作品は、親が一緒に見て具体的に褒める。「ここの動き、自分で考えたの?」と中身に触れると、子どもは「見てもらえた」と感じてまた作りたくなる。漠然と「すごいね」より、どこがどう良かったかを言葉にするのが効く。

正直に言うと、2歳のうちは「教える」段階ではなかった。私は基本、好きに触らせて隣で見ているだけ。それでも本人は楽しそうだったし、無理に教えなかったのが結果的によかったと思っている。
次のステップへ進むための学習リソース
ScratchJrに慣れてきたら、もう少し本格的な題材や、Scratch本体への移行を考える時期が来る。年齢と興味に合わせて選べばいい。
公式チュートリアルとサンプル作品
最初の頼りになるのは公式の作例だ。ScratchJr公式サイトには年齢に応じたアクティビティが、Scratch本体のScratch公式サイトには世界中の子どもが作った作品とチュートリアルが大量に公開されている。完成品を見て真似するところから始めると、ゼロから考えるより取り組みやすい。
おすすめ書籍とオンライン教室
手元に一冊あると、親が流れを把握しやすい。ScratchJrの定番入門書として知られるのが、日経BPの『5才からはじめる すくすくプログラミング』だ。5〜7歳向けに、親子で一緒に進められる構成になっている。
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<!– [AFFILIATE:kantan] 製品名: 5才からはじめる すくすくプログラミング(日経BP) | 設置理由: ScratchJr向けの定番入門書。幼児・低学年の親が流れを把握するための一冊として紹介 –>
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<!– /wp:html –>
低学年になってScratch本体に進む段階や、教材全体を見渡したいときは、年齢別の選び方をまとめた算数・数学が好きになる子供向けコーディング教材ガイドで全体像をつかむと迷いにくい。オンライン教室は各社が無料体験を用意しているので、本人が乗ってきたら体験から試すのが失敗が少ない。
発表会・コンテストへの参加
作品づくりに夢中になってきたら、発表の場という選択肢もある。世界各地で開かれるScratchのイベント「Scratch Day」や、子ども向けのプログラミングコンテストがそれだ。ただ、これは小学校中学年以降の話。わが家はまだ未就学なので完全に先の話で、今は「いつかこういう場があるらしい」と知っておく程度で十分だと思っている。
よくある質問
- QScratchJrは何歳から始められますか?
- A
公式の対象年齢は5〜7歳です。ただし親が作った作品を触らせる遊びなら、それより小さくても楽しめます。筆者は2歳のころに親が作った迷路を触らせていました。自分でブロックを組むのは文字や数の感覚が育つ5歳前後からが目安です。
- Qタブレットとパソコン、どちらがいいですか?
- A
小さいうちはタブレットがおすすめです。ScratchJrはタブレット用アプリで、指で直接さわって操作します。マウスで小さなブロックを正確につまむのは幼児には難しいためです。Scratch本体に進む9歳前後からはパソコンが向きます。
- QScratchJrは無料ですか?課金はありますか?
- A
完全に無料です。アプリ内課金もありません。App StoreやGoogle Play、Chromebookから無料でダウンロードでき、一度入れればオフラインでも使えます。Scratch本体も無料です。
- Q1日にどれくらいやればいいですか?
- A
1回10〜15分で十分です。幼児は集中が長く続かないので、「もっとやりたい」で終わるくらいがちょうどよいです。毎日やる必要はなく、子どもが触りたがったときに遊ぶくらいの気軽さで続けるのがコツです。
- QScratchJrからScratch本体へはいつ移行すればいいですか?
- A
明確な決まりはありませんが、文字がある程度読めて、もっと複雑なことをやりたがってきたタイミングが目安です。年齢では9歳前後が一つの区切りになります。焦らず、ScratchJrで物足りなくなってからで十分間に合います。
まとめ
幼児・低学年のプログラミングは、タブレットとScratchJrがあれば今日から始められる。難しく考える必要はない。
- 5〜7歳の入口はScratchJr、9歳前後でScratch本体へ。年齢と文字の読み書きで選べばいい。
- 小さいうちはタブレット推奨。指でさわる操作が幼児には一番わかりやすい。
- 最初は親が作った作品で遊ばせるだけでOK。自由に触らせて、失敗を一緒に楽しむのが続けるコツ。
最初の一歩は、完璧な作品を作ることではない。「自分が触ると画面の中が動く」と気づくこと。それだけで、子どものプログラミングはもう始まっている。


